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★★ 「もっと知りたいです! 大好きです!」 課長のスッとした背中を見つめて、勇気を出して告白した。 背の高い課長は、いつだって優しくて、いつだって素敵だ。思えば入社同時からくっきりな二重瞼が、どストライク! だった。 人のいない自販機の横。 窓際に佇む課長に向けて、今朝早くに焼いてきたアップルパイを箱に入れてリボンまでつけて持ってきた。 ーーースイーツ作りには、自信がある! アップルパイ入りの箱を両手で差し出しての告白。 まるで、学生の頃みたいにバクバクする鼓動。 「受け取って下さい!」 緊張して声が震えた。 ーーーお願い! 課長! 私の気持ちごと受け取って! ところが次の瞬間、振り向いた顔を見て、奈々は思わず悲鳴を上げそうになっていた。 いや、心の中では『ぎゃあああ!』と雄叫びを上げていた。 ーーー間違えたよ! 課長じゃないじゃん! っていうか、全然違うし! 完全な間違えじゃん! しかも、この人ってば! 振り向いた男は、くっきり二重ではなく、すっきりした一重だった。 「へぇ、三条は、俺が大!好きだったんだ? 知らなかったな」 『大』という所に力を入れて口の端を上げた男は、大好きな優しく二重の課長ではなかった。 一歩後ずさりした奈々が引っ込めようとしていた箱は、むんずと掴まれてしまう。 「なあ、三条。この中身何?」 「こ、これは……」 「なあ、なんだよ? 中身」 「アップルパイ……だけど! あっ! 」 あっという間に箱を取られ、リボンが解かれてしまう。 「ちょっと! 待って! 違うの」 箱をどんどん開いて、食べやすいように切れ目を入れておいたアップルパイのひと切れを出し、瞬く間に大口を開けて入れてしまう。 「ちょっと! ひどい! なんで食べる訳? このバカ!」 奈々は立ったままアップルパイを食べてしまった男の腕を拳で容赦なく叩いた。
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