53人が本棚に入れています
本棚に追加
すると突然、友也はオレを見てこう口にする。
「ねぇ、キスマークどこ?」
「は?」
「どこ?」
なぜかはわからないが、友也はキスマークをつけられた場所を知りたいようだ。
オレはワイシャツの襟をめくると、ここだよ、と指さす。
それを確認すると、友也はそのキスマークに唇を近付けてきた。
オレは慌てて友也の胸を押し返す。
「ちょっ、なにして……」
「消毒」
友也はオレの腕を掴み、有無を言わせない態度でそう告げた。
だんだんと近づいてくる友也の顔を呆然と見つめる。
そのときだった。
「何、してるんだ?」
何者かの低くて怒気を含んだ男の声が聞こえた。
オレと友也は一斉に振り返った。
男は黒い服を身にまとい、塀にもたれ掛かるようにして立っている。
細く切れ長の目、黒く艶のある髪、彫りが深く整った顔立ち。
そして、黒に映える紅い瞳。
「お前、昨日の……!」
間違いない。
昨日会った妖のリュウだ。
昨日は暗くてよく見えなかったが、よく見ると人間離れした顔立ちのよさだ。
きっとこの顔で今まで何人もの人間を籠絡していたに違いない、たどとオレは関係ないことを考える。
ふと、オレは友也に目をやった。
友也は必要以上にリュウのことを睨んでいる。
敵意むき出しでまるで毛を逆立てた猫のようだ。
最初のコメントを投稿しよう!