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「昨日のこと考えたか?」
「……うん」
リュウのことを睨んでいる友也をたしなめつつ、オレはリュウの姿を正面に捉えた。
正直言って妖から身を守る為に妖の力を借りるのは癪だ。
けど、平穏な日時を過ごすためだ。
背に腹は代えられない。
二度とないチャンスかもしれないのだ。
「オレの精気を分け与える。だから――――」
「ちょっとリュウ。独り占めするつもり??」
「え?」
オレが答えようとしたとき、また別の男の声で遮られた。
その場にいた全員の視線が男に集中した。
その男もまた人間離れしたような中性的な顔立ちだった。
いや、そもそも人間ではないのだろう。
ウェーブがかった白銀の長い髪。
肌が白く儚げだが、たれ目の成果甘い印象を受ける。
女物の着物を羽織り、全身から妖艶な雰囲気を漂わせていた。
リュウは知り合いなのか、顔をしかめてため息をついた。
「コウ、お前何しに来た?」
コウと呼ばれた男は質問には答えず、オレと目を合わせてニッコリ微笑むと、オレの腰を引き寄せた。
「オレにもこのコ、味見させてよ」
コウの鼻筋がオレの首元に触れる。
まさか、コイツもキス魔!?
コウは挑戦的な目をしてリュウを見る。
二人の間の空気がピリピリしている。
本格的に身の危険を感じてきたぞ?
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