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なんでいつもオレばっかり…………。
オレはため息をついて相手をじっと睨んだ。
オレはこれまでにたくさんの男の妖に追われてきた。
いつもギリギリのところで逃げ切るので、実際に襲われたことはなかった。
これがオレの特異体質の二つ目だ。
まずい。
この状態は非常にまずい。
とにかくこの現状をなんとかしなければ。
「それで睨んでるつもりか?だとしたら逆効果だぞ。相手を煽るだけだ」
どういう意味だ、と問いかける前に唇に何かが触れた。
それと同時に視界に男の顔がドアップに映る。
それがキスだと理解したのはそれから数秒後のことだった。
「なっ!?なにするんだよ!」
「…………。そんなことより、お前アレに追われてるのか?」
人生で初めてのキスをそんなことの一言で片付けられ、オレはキレる寸前だったが、男の言っている意味を理解するとキレるどころではなくなってしまった。
「アイツ!さっきのヤツだ!」
オレの視線の先にはドロドロと溶けている男の妖。
ゆっくりとだが、確実にこちらへ向かってきている。
逃げようにも、この目の前の男のせいで身動きが取れない。
どうしよう。
このままじゃ……!
「なぁ、お前。助けてほしいか?」
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