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男は悠長に問いかける。
オレは深く考えずにこくりと頷いた。
男はニヤリと笑って妖に向かって手を振りかざした。
その瞬間、男の手から光が放たれる。
妖は苦しむ間もなく消えていった。
「ふん。弱いヤツだな」
「え、えっと……消えた……?」
この数秒間で起こった出来事がオレには理解出来なかった。
今までたくさんの妖に追われたことはあっても妖が消えるのは見たことがない。
いつもいつも家まで逃げてやり過ごしていたんだ。
「消えたんじゃない。俺が倒したんだ。大したことないヤツだったがな」
は…………?
倒した?
ということは、もしかしてこの人…………。
「退魔師?」
「違う。俺は妖のリュウ。淫魔(いんま)の一種のキス魔だ」
リュウは妖。
しかも淫魔……。
キス魔だかなんだか知らないけど、ということは実は今めちゃくちゃピンチなのでは…………!?
ってかさっきのキス!
オレはリュウとのキスを唐突に思い出した。
「おいお前、オレのファーストキス返せ!!」
近所に聞こえるんじゃないかってくらいの大声が出た。
怒りやら恥ずかしいやらできっとオレの顔は真っ赤だろう。
「ほう。お前、キス初めてだったのか」
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