53人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺のものっていう印だ。まぁ、これで弱いヤツは来ないだろう。ありがたく思え」
「あ、ありがとう?」
って、ここは感謝すべきとこなのか?
激しく疑問を感じる。
でもこれで弱い妖からは狙われずに済むんだ!
きっとリュウはいい妖なんだ!
俺のものっていうのが気になるけど。
「それにしてもお前、すごい霊力だな」
「まぁ。そのせいで妖に襲われそうになったりしてホント大変なんだからな」
オレが妖に追われるのは日常茶飯事なのだ。
妖に遭遇しない日の方が珍しい。
妖から逃げる日々を送っていたせいか、足が無駄に速くなってしまった。
それは校内での最高記録を更新してしまう程に。
「で、お礼って何すればいいの?言っておくけど、オレを食べるとかはなしだからね」
「当たり前だ。お前を食べたら助けた意味がなくなる。まぁ、喰ったらうまそうだがな」
リュウはニヤリと笑う。
オレはぶるりと身震いする。
きっとリュウを怒らせたら、オレは簡単に喰われてしまうだろう。
オレは何を言われても言いように身構えた。
「おい、そこまで警戒するな。ただときどきお前の精気を分け与えてくれればいい」
「は?……精気?」
「あぁ。例えば、こういうふうに…………」
「んっ……んんっ…………ふぁっ」
リュウは再びオレにキスをする。
さっきより長く、そして深く。
頭がボーッとして意識が遠のきかけた頃、ようやく唇を離された。
酸欠状態のオレは目が潤み、頬は赤く、ただならぬ色気を放っていたことだろう。
「な、に……するのさっ」
「やっぱりお前は最高だ」
上機嫌のリュウをギロリと睨みつけるも、リュウには全く効果がないらしい。
リュウは楽しそうに笑うだけだ。
「まぁ、このままだとお前は妖に狙われ続け、死ぬだろうな。だが、俺のそばに居るのなら身の安全は保証しよう」
リュウの声音は先程のものとは違い、真剣なものだった。
リュウに身を任せていいのだろうか?
リュウは妖。
しかも淫魔だ。
いろんな意味で身の危険を感じる。
「このまま妖に喰われるか、俺のそばにいるか、どちらがいいか選べ」
「そんなのって……」
「返事は明日でいい」
リュウがそう言うと、突風が巻き起こった。
突然の強風にオレは思わず目をつぶる。
目を開けたときにはもう、リュウの姿はなかった。
何事も無かったかのように辺りはいつもの静けさを取り戻していた。
オレの受難はこの日から始まったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!