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学校を出る頃には空はすっかりオレンジ色に染まっていた。
遠くでカラスの鳴き声が聞える程、辺りは静まり返っていた。
「で、梓はその妖の言うこと信じるわけ?」
「うん。だって、実際に今日は妖あまり寄って来なかったし」
「ふーん……」
友也はそうつぶやくなり、押し黙ってしまった。
なぜか友也は不機嫌さを醸し出している。
急にどうしたんだ?
周りの静けさも相まって二人の靴音がやけに大きく響く。
何か癇に障るようなこと言ったかな、と考えてみたけど何も心当たりはない。
友也はオレの特異体質を理解している唯一の人だ。
もっとも友也自身も同じような悩みを抱えていたことが仲良くなったきっかけだといえる。
つまり、友也も霊や妖などが見える。
その力はオレほどではないので襲われることはそう多くはない。
それでも苦労は耐えないようだ。
友也が口を閉ざして数分。
オレは周囲が不自然なほど静かなのに気付いた。
車通りどころか人通りもない。
むしろ人の気配が全くないと言った方が正しいかもしれない。
普段こんなに静かだったっけ?
「友也、なんか静かすぎない?」
「そう?気のせいじゃないの?」
友也は全く気にしていないようだ。
オレは首を傾げる。
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