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▽
──くそ、やってしまった。
目の前の少年を助けようと飛び出したはいいが、防御もできずにまともに攻撃を喰らってしまった。
青い装甲に大きくヒビが入り、装甲の隙間に疾る、正常稼働を示す白い光は異常を示す赤へと変わっている。無線機は完全に沈黙していた。
『他に動く反応がある』と言われた時は新手かと思ったが、何のことはない。ただの一般人だ。
──世界の穴から入ってきたか。
これなら新手の方がマシだったなどと思いながら、何とか身体を動かそうとするが、力が入らない。
助けた少年──先程商店街でぶつかった少年──がこちらへ駆け寄ってきた。
「......逃げろ!お前が入ってきたとこまで走れ!」
「な、なに言ってんだ!お前ボロボロじゃんか!」
「早くしろ!......アイツは俺が倒す。お前は逃げろ!」
声を張り上げるだけでも辛い。もう一度「早く!」と叫ぶと、アイツは泣きそうな顔をして走って行った。
「同情。命、助けた、相手、お前、放って、逃げた」
「......ふん。戦闘に邪魔だからこれでいい」
「戦闘?否。今から、開始、一方的な、蹂躙、捕食」
「ああ、一方的だよ。残った腕もなくなると思え」
強がるのも限界か。ゆっくりと近づいてくるキャンサーを睨みつけ、途切れそうになる意識を何とか繋ぎ止める。
その時、
「おらぁぁぁぁっっっ!!」
背後から聞こえた叫び声。
俺の上を飛び越えて、鉄パイプを持った先程の少年がキャンサーに殴りかかった。
コーンと間抜けな音がして、鉄パイプはキャンサーの顔面で受け止められる。
「おらおらおらぁっl!!」
少年は何度も何度も鉄パイプを振るい、キャンサーは奇怪なものを見る目で動きを止めている。
衝突の衝撃で手が痺れたか、鉄パイプを落とした少年は今度は拳を握り殴りかかる。
「何を、している、ガキがっ!」
キャンサーが腕を軽く振るい、少年は宙を舞った。
「うぅ」と呻いた彼はしかし、両の手を地面につき勢いよく起き上がると、またキャンサーに向かっていく。
それを払うキャンサー。宙を舞う少年。
彼は再び立ち上がる。性懲りも無く正面突破で走っていく。
吹き飛ばされる。立ち上がる。走り向かう。吹き飛ばされる。
「......な、何やってんだ!もう立つな!お前じゃ勝てないんだバカやってないで早く逃げろ! 」
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