第1話

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▽ 燃え盛る炎の柱が、少年(ユウキ)の身体を包み込んだ。 彩ない世界に、突然加えられた強烈な赤。 呼応するかのように、スズリの無線機が息を吹き返す。 向こうから聞こえてくるのは、驚愕に声を上げる諏訪の声 『スズリ!何があった!応答してくれ!おかしいぞ、こちらのモニターには』 『キャスター反応が二つある!!』 スズリは返答できない。 炎の柱が消え去った後、そこに立つ少年。 ゆっくりと振り返った、彼の胸に灯る炎。 ずっと守ってきた。 キャスターとして、この世界を。 そんなスズリが、初めて言われた「守る」という言葉。 「待ってろ。アイツ、ぶっ飛ばしてくる」 そう笑った彼の笑顔に、スズリは見とれてしまっていた。 ▽ 胸の底から湧き上がる力に、ユウキ自身かなり戸惑っていた。 だが、不思議とどう使えばいいかわかる。 拳を一度開き、強く握る。 すると、拳にカッと熱が集まり火が点いた。拳を覆うように燃える炎は暖かい。 唖然としている怪物を正面に見ると、そいつは一歩後ずさった。 「なんだ、お前。なんなんだお前!!」 しかし、吠えた怪物はこちらへ飛びかかってくる。 鉤爪を振り上げ、オレの体を真っ二つに── 「遅せぇよ」 力の限り突き出した、炎を纏った拳。 怪物のガラ空きのボディに一撃。 フッと怪物が宙に浮く。 ──終わらないぞ。 足に力を込め、怪物が地に落ちるより早く三段蹴り。世界がゆっくりと流れる。 そう。きっとこの(ほのお)は副産物だ。この力の真価は、湧き上がるこの原動力にある。 言うなればエンジン。父さんの言葉(ガソリン)で加速するこの身体は熱を持つ。 「ぉぉおおおっ!!!」 最後に繰り出した正拳突き。 怪物の胸に深く突き刺さり、ぶっ飛ばす。 遠く飛んだ怪物は、瓦礫の山にぶつかって動かなくなった。 スゥと抜けていく力と熱を感じながら、背後を振り返る。 呆然と見つめる彼に「へへ、やったぜ」と笑うと、グラリと世界が傾いた。 「おい!大丈夫か!」 そう叫ぶ彼の声を遠く、遠くに聴きながら、オレの意識は深く落ちていった。
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