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最後にもう一度「ごめんなさい」と言うと、色とりどりの料理が乗ったトレーを、暗い立方体内へと引き入れた。
代わりに出て来た今日の昼ごはんのトレー。
半分も手をつけておらず、一枚のメモ。
「美味しかったです。けれどごめんなさい食欲がないの。ありがとう」
毎日、これが繰り返されている。
半年前のあの事故以来、言語癌対策本部二人目のキャスターは自ら作り出した塀の中に篭っている。
日に日に痩せていく姿と、仲間に迷惑をかけていることで謝り続ける彼女を見ていると、胸が苦しくなる。
「無理は、しないで」
そう言うと、百合は部屋を出る。
立方体に寄り添うように置かれた布団──スズリの布団──を見て、
──きっと、大丈夫。
彼女はゆっくりと扉を閉めた。
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