第一章

3/4
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「クシナダヒメに同意。ちょっと今日ゲームやりすぎよ? いい加減やめなさい。昨日から徹夜でしょ。ずっと敵を倒す系のイベントばっかしてるし。ストレスたまってんの?」  神様が怒り爆発させるよりか、ゲーム内で発散してくれたほうがいいに決まってるが、限度がある。 「……別に」  そう言いながらも、クリアしたとこでセーブして切った。 「別にって顔してないわよ。ほら、イライラしてる時は甘いもの」  九郎の分の苺を口に押し込んでやった。  もぎゅもぎゅ。あれ、いつもなら手放しで喜ぶのに。クシナダヒメ秘伝の「機嫌直し技」なのにな。 「本当にどうかした? 人に話すと楽になるわよ、しゃべってみ」 「ああ……うん」  歯切れが悪い。フォークに差してやって食べさせてやると咀嚼するけど、反射的動作でしかない。 「……ちょっと境内パトロールしてくる」 「ええ?」  ふらっと出て行った。そんなん初めてだわ。  まぁ、神様にも色々あるだろう。しばらく一人になりたいなら、そっとしとく。  ……が、一時間経っても帰って来なかった。 「どこ行ったのよ。心配じゃない」  さすがに探しに行くことにした。 ☆ 現在、本殿は改修中だ。老朽化とかじゃなく、祀られてる蛇神本人の意向によるリフォーム。 元々この神社はかつて九郎を封じた人間が「邪神を封じる」って意味で建てたもの。そりゃ嫌だろう。 すっかり邪神から縁結びの神に評判が変わった神社は、工事中でも参拝客が多い。火との間をすり抜けつつ、九郎を探した。 一回りしたけどいない。何しろ九郎は人より頭飛びぬけてるんで、すぐ見つかるはずなのに。人間に擬態してても背が高いし、あたしには本来の蛇の姿も見えるしね。九つも頭のある大蛇がいれば、一発で分かる。 あちこちにいる巫女バイト(九郎の配下)に聞くと、外には出てないようだ。社務所にもいない。 鳥居付近で掃除してる警備員(やっぱり配下)も、見てないという。 念のため九郎が封じられてた洞窟にも行ってみたけど、いなかった。 「どこ行ったんだろ? あと探してないのは……」  敷地の奥へ向かった。  あっちは先祖代々の墓地がある。当然立ち入り禁止区域で、普段はあたしら家族しか行かない。森の中にひっそりとある、静かな墓所だ。  細い小道を歩いていくと、ほどなくして九郎の姿が見えた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!