第一章

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 墓地よりだいぶ手前で止まってる。固い顔で立ち尽くしていた。 「九郎?」  ゆっくり近づき、袖を引っ張る。  九郎が驚いたように振り返った。あたしだと分かり、ホッと息を吐く。 「気づかないなんて珍しいね。大丈夫? 顔色悪いよ」 「……ああ、大丈夫だ。東子の顔見て楽になった」 「ここ、お墓だよ? あ、もしかしてお姉さんのお墓参り?」  あたしの先祖は九郎の異母姉だった。彼女は普通の人間で嫡出子。九郎は父親違いの非嫡出子だ。  彼女は九郎への恨みを利用され、封印するよう仕向けられたとこの前判明した。 「……今日はちょうど彼女の誕生日なんだ」  九郎はお姉さんを「彼女」と言う。恨まれていて、姉と呼ぶことすら許されないと思ってるから。 「そうなんだ。じゃ、お花あげよっか。どれがお姉さんのお墓か分からなくて困ってたの?」 「いや……いい。分かってて墓所に入らなかっただけだ。……入れなかった。彼女は俺の訪れなんて望んでないだろう」  寂しそうに言う。 「まぁ、もう彼女の魂はここにないし……俺の気持ちの問題なんだがな」  九郎はあたしのおでこに額をくっつけた。 「スサノオにも話しておけと言われたし、ちょうどいい頃合いだろう。見てみるか? 昔一体何があったのか―――」  頭の中で映像が再生される。  ずっと昔の九郎の記憶が見えた。
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