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「―――助けなきゃ」
俺はすぐ行動に移した。
実父に苦しめられてるものたちを助け、匿い、逃がす。
俺が八岐大蛇の息子だってことは、神ならすぐ分かる。恐れられたり、敵意や憎しみを向けられるのはしょっちゅうだったよ。
「信じてくれなくていい。俺を憎んでもいいから、聞いてくれ。今のうちに逃げるんだ」
大体あっけにとられてたな。
そうこうするうち、実父も俺の存在に気付いた。
「貴様、わしの子か。存在自体知らなかった」
「構わないさ。息子と認めてもらいたくはないし、こっちも父親とは思ってない」
一度本気でやりあったよ。
さすがに強く、互角だった。俺も深手を負い、退却せざるをえなかった。
実父も重傷で、しばらく大人しくしてたもんだから油断した。やつはその間に弱い神たちを食べ、力をつけてたんだ。
対処が遅れたのは、俺は自力で傷を治さなきゃならなかったからだ。
「蛇神様、私どもにお世話させてください」
「恩返しさせてください!」
「いらん。出て行け。近寄るなと言っただろう!」
助けたものたちが駆けつけて看病を申し出たが、全部断った。もし俺に関わったと知れば、実父に狙われるかもしれない。俺を悪神だと思っているものたちからも嫌がらせされるだろう。
さんざん言ったのに、勝手に近くに住み始めた。何度追い払ってもやってくる。俺の傍にいると巻き込まれるのに。
なんとか動けるまでに回復すると、再び救助活動を始めた。クシナダヒメの姉たちもこの頃の話だな。
俺が倒すのは無理だ、と冷静に分析した。そこで戦闘力の高いスサノオに頼んだ。素直に頼んでもやってくれないだろうから、川に箸を流して誘導したりしたよ。
後は知っての通り。八岐大蛇は退治され、やっと俺もひっそり暮らせるはずだった。
☆
そうじゃなかった。
勝手に住み着いた自称配下が駆け込んできた。
「蛇神様! 人間が大挙して押し寄せてきます!」
「……知っている」
異父姉が俺を討つために来たのだと知っていた。
人間が増え、これまで未開の地だった場所も開墾する必要があったせいもある。
「戦いましょう!」
「駄目だ。お前たちは去れ。……巻き込みたくない」
力を使い、全員遠くへ飛ばした。
「……これでいい」
静かに笑むと、粗末な小屋を出た。
すぐ見つかるよう、野原の真ん中で待つ。
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