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そしてそれに刃をぶつけ静止してるのは、聖剣。
先ほど失われたかと思われた、少女のもう一方の聖剣だった。
少女が微笑った。
「――こういうの、魔物はやらないでしょ?」
何が起こったかというとだ。
一方の聖剣でエリカの剣を留めながら、どこかから出したもう一方の聖剣で、少女がエリカの脇腹を抉ろうとした。それを、エリカが肘から出した牙で食い止めたと――そういうことだった。
いいよな?
そういうことで。
エリカと少女。
どちらも達人で、超人だ。
そんな二人の戦いは、既に俺の認知がついていけない領域に踏み込んでいた。
鍔迫り合いが続く。
二人の姿は、静止したがごとく、指一本の位置すら変わらない。
だがその体内では、お互いの剣を接点に、凄まじい勢いと複雑さで力が行き交っていた。全ての筋肉と、内臓の重みまでも使った力のコントロール。それによって相手の重心を崩し、身体の制御を奪い取るべく、技量をせめぎ合わせているのだ。
「………いいじゃん、いいじゃん」
少女が、にっと笑った。
彼女にしてみれば、自分とここまで競り合える相手というのも、なかなか出会えないのかもしれない。
二人の力は、拮抗して見える。
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