神の依代

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出だしの笛の音が流れる中、俺が先で夏生が後ろについて舞台に出てゆく。田舎の神社だから大した広さはない。壁際と縁側みたいなところに見知った人たちがびっしり詰めかけて俺達を見ていた。 のまれちゃいけない。 夏生に教えてもらったコツを思い出す。 『集中しろ、音楽だけを聞け。あとは身体に任せるんだ、勝手に踊るから』 夏生の気配を感じながら、歌に合わせてゆっくりと腕を開いて行く。 そこからは別の人間の記憶みたいだった。 心がどこかに離れ、遠くから自分の目を通して音や光を感じている。周りの人達の顔はどれもはっきり見えたのに、誰がいたのかなんて全く覚えていなかった。 夏生がどの位置にいてもぴったりと息を合わせて鈴を鳴らし、足を踏み鳴らす。 身体も心も高揚して自分がとけてゆく。 気持ちいい。 こうやって一つになれるんだ。
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