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夜が見ている
何だよ、あれ。
イライラを隠せないまま扉が閉まるのを見て気が抜けた瞬間、後ろから強く抱きしめられていた。
首筋に当たる熱い息、身体に巻き付いた筋肉質な腕が、夏生だった。大きな体が俺を包み込んでいる。さっき肩を抱いてじゃれ合った時とは明らかに違う感情がこもっていた。
「祥爾……俺」
苦しそうな声に熱が高まる。鼻と唇が首筋に当たる感触にぞくぞくして、身体の奥に甘いものが広がった。夏生に抱かれているというだけで、こんな場所なのに欲望が湧き上がり、肌越しに伝わってくる夏生の体温に気持ちが止まらなくなる。
待っていても夏生は何も言わなかった。ただ黙って強く抱きしめて、息を吐いているだけ。
たまらなくなって肩を掴む手に手を重ねると、夏生も指を絡めて握り返してきた。気持ちが指先から流れ込んでくる。俺を欲しがってるって気がした。
俺も夏生が欲しい。
首を曲げて絡められた親指の先にキスをする。息を飲む音が耳元で聞こえた。力の抜けた手を口元に引き寄せて掌の隅々まで何度も唇を押しあてていると、後ろで夏生の息遣いが変わってきた。
指の間に舌を走らせ、後ろで身じろぎをする身体を押し留めるタガを揺さぶってやる。大きく息をのむ音がしてもう一方の腕に力が入り、耳元に何度もキスされた。
その感触に甘いため息を漏らすと、夏生の歯がそっと耳たぶを噛んだ。暖かく湿った舌が穴に入ってきて、身体が痺れて力が抜けてゆく。
口の中に入り込んできた夏生の人差し指を吸い上げ、衣装越しにもはっきりわかるくらい硬くなったソレが背中に押し当てられるのを感じていた。
「夏生」
「……祥爾」
名前を呼びあっただけで熱い気持ちがこぼれだす。
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