夜が見ている

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あ、くる。 何度か深く打ち込まれ、えずきそうになって頭を引いたのに、腰を押しつけられ口の中に生暖かいものが迸った。 驚いた瞬間、粘度の高い液体が変な所に入って激しくむせた。 「ゲ、ゲホ、ケホッ、うっ!ッ、ケホッ!」 「祥爾、ごめん、大丈夫か?」 焦って背中を撫でながらタオルで俺の口から零れる唾や精液を受け止めてくれた。 顔を上げると、快感の余韻で上気した夏生が戸惑っていた。 「……ケホッ、なつ お」 嬉しいのと、いきなりこんなことをした恥ずかしさで頭の中がぐしゃぐしゃになる。顔を見られないように下を向いたら訳も分からず涙があふれた。 夏生が汗と勘違いしてくれればいい、泣いてるなんて知られたくなかった。 吐精の痕跡を一通り拭ったタオルを縛って丸めて、夏生は窓を開けた。 え、と思う間もなく、振りかぶって投げたタオルが外の闇に向かって吸い込まれてゆく。 「拭こう、単衣も脱げよ」 何事もなかったかのように言う。 すっかりはだけて皺くちゃになった着物を脱ぎ、夏生について洗面台に行くと、新しいタオルで顔をぬぐってくれた。何度もすすぎながら拭き、濡れた下着を見てお互いに苦笑した。 「なぁ祥爾、お前ってもしかして……」 言い終わる前に窓の外から呼ぶ声が聞こえた。 「二人とも早くおりてきなさーい。もう始まるわよー!」 現実に引き戻される。ここは公民館で、俺達はさっき神楽踊って、これから宴会に参加するんだ。 「今いきます」 窓越しに夏生が答え、早く服を着るように身振りで示した。 さっき何言いかけた、と聞けないままTシャツと短パンに着替え、着物は衣桁に引っかけた。温いエアコンの風が、汗と欲望の残り香を早く消してくれればいいのに。
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