緑燃ゆる

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そんな時、 >映画行かない? という誘いで一度だけセンパイと遊びに行った。 当たり前だけど、映画館でも街を歩いている時でも男友達にしか見えないと思う。俺たちが二人きりの時何してるかなんて誰にも分からないんだ。 「途中から寝てなかった?」 「観てたよ、でも話がよくわかんなかった」 「ふうん、シリーズ物だから前の観てないと分かんないかもな」 映画は人気シリーズの最新作だった。俺は第一作しか見たことなかったし、話が早くてついていけなかったのと、半分上の空で内容が頭に入ってなかった。 ぼーっとしてジュースを飲んでいたら、ふと視線を感じた。センパイが真顔でじっと見ていた。 俺が聞いているのを確認してセンパイはさっと左右を見た。周りの人達はそれぞれの会話に夢中になっていて俺達の事なんか見ていない。 「質問がある、ちゃんと答えろよー」 わざとなのか、急に軽い口調で言われた。 「は?何、突然」 「祥爾は俺のこと好き?」 「何?」 予想外の言葉に思わず眉根を寄せた。 好きも嫌いもない。あんたは俺とやりたいだけなんだろ? 意味が分からない。 黙っているとセンパイは苦笑して頭を掻いてから俺の耳元に口を寄せて小声で訊いた。 「じゃあ俺とするのは?好き、嫌い?」 考えたこともなかった。誘われればしたくなる、してる時は気持ちよくってどうでもよくなる。その感情をどう言葉にすればいいのか分からない。 何も答えられずに横を向くと、すぐ傍で真直ぐに俺を見て笑った。 「今度会う時にまた聞くから、考えとけよ」 もしかして、この人は俺の事好きなのかもしれない。 『今度』がいつかは決めていないけど、だったらなおさら、もうセンパイと会ってはいけない気がする。 本当は、映画の間中も夏生の事が頭から離れずにいた。 帰り道、センパイにされた質問を思い出していた。 夏生は俺のこと好き? 俺とするのは嫌じゃない? そして、あの時何を聞こうとしてたんだろう。 家に帰って正気に戻って俺の事を軽蔑した?やり慣れた馬鹿だと思った? 決定的な答えなんて知りたくないのに、声が聴きたくて仕方なかった。
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