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どうやらあの女は自分の娘を王子に娶らせる計画の様だ。娘が王子の子を産めば将来は国王だ。自分は王妃の生母、ゆくゆくは国王の祖母って事になる。
いやはや。何とも大それた野望じゃねぇか。玉の輿の最上級だ。さぞかし乗り心地は良かろう。
ま、乗せてやるつもりは更々無いがな。
「んで、どうします? 舞踏会をぶっ潰しますか?」
「いいや。ここは盛大に催してもらおうじゃないか」
魔女様の言葉に俺達は呆気に取られた。だってそうだろ? 何でわざわざあの女の筋書き通りにさせる必要がある?
「魔女ってのはね、そう簡単になれるもんじゃないんだよ。魔法に真摯に向き合い、己を研鑽して高みへと至ってようやくなれるのさ。それをほいほいと悪魔の贄にされて黙ってられるかい」
おぉ。魔女様が珍しく本気で怒ってる。
「まったく、ナメた真似をしてくれたあの女にはきっちりと教えてやらないとねぇ。もちろん、贄になった魔女にもいつか説教してやるけどねぇ」
青筋立てた笑顔で縁起でもない事を言わないでほしい。
「魔女様、激おこっす。マジ怖ぇっす」
「ネズミ!」
「へい!」
だからお前はどこの岡っ引きの子分だ。
「あの家にもネズミはいるね?」
「一家四匹ほど」
「そいつらに話をつけな。ちょいと協力してもらいたい」
「問題ないっす。何度か話をしたんすけど、あの継母二号とその娘達を毛嫌いしてるんす。シンデレラの部屋っつーか納戸なんすけど、そこにも出入りしててシンデレラに懐いてるっす」
「それなら話は早いね。シンデレラの所には確か畑があるんだったね? 今は何が植わってるんだい?」
畑?
「畑っすか? 今はレタス菜と人参、それとカボチャっすけど……」
「そうかい。そりゃ何よりだ。世話はシンデレラがしてるんだね?」
「そうっす。継母二号、シンデレラにろくに金も渡さないで美味い飯作れって無茶言うんす。だからシンデレラは自分で畑作ってるんす」
「健気だねぇ」
「けど、これでだいぶ手間が省けたよ」
「一体何の手間なんです?」
「わざわざ作るよりも、ある物を使った方が楽って事さ」
魔女様はそう言ってパチンとウインクしてみせた。
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