いざ、舞踏会へ

2/7
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
 とうとう舞踏会の日がやってきた。水晶玉の中では今日も継母二号と義姉達が喧しい。いや、今日は特別喧しい。 「シンデレラ! 私の靴はちゃんと磨いてあるんでしょうね!」 「ちょっと! 首飾りはコレじゃなくてもっと派手なのを持って来なさいよ!」  ドレスを取っかえ引っ変えしては、あーでもないこーでもないとやっている。その度にシンデレラは三人の間を行ったり来たりして支度を手伝わされている。 「お義姉様、靴はこの羽のついたのでよかったですか? それとも薔薇の花飾りの方ですか?」 「お義姉様、その首飾りはこの耳飾りと一揃いですから、きっと王子様も気に留められますよ」 「お義母様、扇子にはお気に入りの香りを付けましょうか?」  嫌な顔一つせずに、一生懸命に考えて動いているのが水晶玉からも見て取れる。本当に優しい娘だよなぁ。だからこそコイツらがムカつく。 「どんだけ着飾ったところで顔に性根が透けてるぜ」 「まったくだねぇ。『豚に真珠』ってのはこういうのを言うんだろうね」 「豚に失礼っす。豚は綺麗好きだし、肉は美味しく食えるっすけど、コイツらは煮ても焼いても食えないっす」  なるほど。そりゃ確かに豚に失礼だな。よく見りゃ子豚なんか目がつぶらで可愛げあるもんな。 「そうだね。豚に失礼だったよ。ごめんよ、豚」  俺達が豚に謝罪してる間にどうにか支度が終わったらしい。ゴテゴテに着飾った豚以下……いや、豚よりも遥かに劣る三人が馬車へと乗り込んでいく。 「いい事、シンデレラ? 私達が戻ってくるまでに家を掃除してお茶の支度をしておくのよ? それと居間と私達の部屋を片付けて暖めておくのも忘れない事」 「はい、お義母様」 「帰ったら、たっぷりと聞かせてあげるわ。どれだけ素晴らしい舞踏会で、王子様がどれほど素敵だったか。アンタなんか舞踏会に出れる訳が無いんだもの。話を聞けるだけでも喜びなさいな」 「はい。楽しみにしてますわ、お義姉様」  馬車を見送ったシンデレラは小さな溜息をついて家の中へと戻って行った。  さてと。作戦開始だ。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!