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「魔女様ー、あのカワイコちゃん助けたげましょーよー」
「出たよ、この女好き」
薄暗い部屋の中にチャラい声が響く。それに答えた声は呆れを隠そうともしていなかった。まぁ俺もイラッとしたくらいだから無理も無い。
「いいじゃないっすか。男だったらカワイコちゃん好きっしょ」
清々しいまでに言い切る声。一緒にするな。一括りにするな。隣の愛する嫁からの視線が痛い。俺は違うからな? お前一筋だからな?
「確かに顔は可愛いらしいがねぇ」
何故か困った様な声。
「何か問題アリっすか?」
薄暗い部屋の中央にあるテーブル。年季が入り過ぎて少し傾いだ天板の上に乗る大きな水晶玉は、何故か転がりもしない。
「あの娘、咎人なのさ」
「えっ?!」
皆の視線が水晶玉に向けられる。その中に映る、一人の娘。やたらと高画質な映像が結ぶ、その姿。
艶の無い髪を無造作に引っ括り、召使いすら着ない様な質素い服を着て、ネズミの様に家中をあちこち走り回っている。
「俺でもこんなに走り回ってないっすよ」
そう言うのはテーブルに後ろ足で立つネズミ。薄灰色に金メッシュのチャラいネズミである。
「ま、アンタより働き者なのは確かだね」
「るっさいっす」
先程と同じく呆れた様にネズミを見るのは家事妖精のシルキー。透けた身体がゆらりと揺らめく。ちなみに俺の嫁さんだ。やらんぞ?
「しっかし、こんな娘が咎人ねぇ。魔女様、この娘の咎ってのは何なんだい?」
「親殺し」
ぽつりと溢れた言葉に俺も皆もギョッとする。この娘っ子が親殺しなんて大罪を?
「義理の親でも親は親だよ。それをこの娘は殺してしまったんだ」
魔女様の嗄れた声がやけに耳に響いた。
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