灰被りのエーラ

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 母親は本当に病気による死。 「エーラ……お父様の言う事を聞いて、いい子に……ね?」 「お母様! お母様ぁああ……!」  父親ってのは商人らしい。大きな都市に新しい店を出したとかで自宅にはろくに顔も出していなかった。つまり自分の嫁さんが病気で、一人娘(エーラ)が看病してんのに、だ。 「ろくでもねぇな」  葬儀もそこそこに仕事に戻る父親、それを見送る娘の映像を見ながら、俺は思わず悪態をついていた。だってそうだろうがよ。自分の嫁さんと娘を放っぽらかすとか、ありえねぇだろ。 「世の旦那衆はブラウニーのダンナみたいな方が少数派(レア)っすからねー」  チャラネズミが珍しくしみじみした声で言うが、俺にとっちゃ当たり前なんだがな。 「あー、そこで継母が……あれ? 仲良くないっすか?」  チャラネズミの言う通り。父親がすぐに再婚して──俺としちゃそれもムカつく話だが──田舎から王都へと連れて来られた娘は継母と一緒に暮らし始めた様だが、特に問題無く日々を過ごしている。 「こんなに仲良しなのに何で殺しちまうかねぇ?」  シルキーが首を傾げるが俺達全員が同じ気持ちだっただろう。  そして、その謎は解けた。 「きゃぁあああ! お義母様?!」 「奥様! お嬢様! きゃあああ!」  どうやら模様替えをする為に物置にある大きな箱を開けて中の物を探していた時に蓋が落ちたらしい。固定する為の金属が使われている、重たい蓋が。中を覗き込んでいた継母の上に。 「お、お嬢様! 貴女、どうして!」 「お義母様! どうして! ちゃんと掛金で固定してあったのに!」  どうして、かはともかく。こうして、継母は死んだ。  だが、娘の本当の悲劇はここからだった。
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