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「どうっすか! コレ!」
ネズミが必死に訴える。いつもチャラくてちゃらんぽらんなコイツが珍しく真面目な顔になっている。そして若干、涙目だ。
「どうもこうも……酷い話じゃないか!」
嫁さんに至っては号泣レベルだ。人情家で涙脆いからな。そういう所も大好きだ。だが俺の服の裾で鼻をかむのは勘弁してくれ。俺はそっとタオルを渡した。
「私らは人間の運命に深く関わっちゃならない。コレは魔女の掟なんだよ」
「そんなぁ!」
悲痛な叫びに心が痛い。俺からも何とか。そう思った、その時。
「けど……ちょいと気になるねぇ」
低い、魔女様の声がした。
「魔女様?」
「ネズミ、アンタのネットワークを使って調べな。特にあの継母。自宅があった田舎も。とことん調べな」
「合点承知! 俺の持てるコネをフル稼働させるっすよー!」
「シルキーとブラウニーにも動いてもらうかもしれないからね。いつでも家を空ける準備はしておきな」
「あいよ」
「俺らが出張るか。こりゃ大掛かりだな」
「そうならない事を祈るけれど……魔女ってのは悪い予感の方がよく当たるからねぇ」
やれやれ、と腰を上げる魔女様を支える。シルキーは既にお茶の支度で飛んで行った。比喩じゃなく。俺達は妖精だからな。壁をすり抜けるなんて朝飯前だ。
こうして俺達は動き出した。まだ確証は無いが、俺も皆もわかっていた。魔女様の予感が的中するだろう事を。
何せ、魔女様だからな。
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