-2 狂気

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 狂っている―――――  人々の真ん中には、鉈や斧で切り刻まれた死体が2体と、ロープで縛られた老夫婦。それに、まだ高校生くらいと思われる女の子。  その女の子が半狂乱になり、泣き叫んでいる。動かない物と化した中年の夫婦が、この女子高生の両親なのだろう。 「仕丁はこれで、あの子1人になった。あの子と随身の2人を殺せば、タエは無念を晴らして消える」  その声が聞こえた直後、住職の怒声が境内に響いた。 「あんたらは、自分達が一体何をしているのか分かっているのか?  地蔵谷で生活を共にしてきた者達を、集団で殺害しているんだぞ!!」  集落の人々は住職に注目し話しは聞いたものの、その吊り上がった目尻が下がる事はなかった。それどころか、逆に住職に詰め寄ってくる。 「皆で決めた事じゃ。今更お前さんが何を言おうが、決定が覆る事はない」  群衆の中から白髪の老人が歩み出て、住職に告げる。  元より、外界と断絶して生活をしてきた人達だ。その意志は合議により決定され、決議後は異論を認めない。現に、住職は口籠り、 反論すらできずにいる。 「次だ、次を引き立てろ!!  急がないとタエが来て、我々も巻き込まれるぞ!!」  誰かの声が聞こえ、殺気と狂気が入り乱れた掛け声が沸き上がる。下手に口を挟むと、一緒にに殺されかねない。  すると、皆の中心にいた3人の内、老齢の男性が立ち上がった。 「ワシを殺せ。ワシを殺してタエが救われるのならば、八つ裂きにされても構わん」 「よし、ここまで連れて来い!!」  2人に両腕を掴まれた男性は、刃物を持つ人達の前に連れて来られた。
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