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 こういうのが俗にいう四面楚歌っていうヤツか――  まるで珍しいモノでも見るような目つきが方々から飛んでくる。  隣の席のヤツ同士、ヒソヒソ声で囁き合いながらチラリチラリとこちらの様子を窺っては、奇異の視線が冷たく嘲笑う。  何も聞かずとも、まるで『お前なんか畑違いだ』とでも言いたげな、冷ややかな視線が重苦しく渦を巻く。 「今日からこのクラスに転入することになった鐘崎遼二(かねさき りょうじ)君だ。鐘崎君はご両親の仕事の関係で、小さい頃から香港に住んでいてな。だから日本語は勿論、英語と広東語の三ヵ国語ができるという、たいへん優秀な生徒だ。時期外れの転入だが皆、仲良くするように」  教壇の隣で、俺の頭ひとつ分ほど小さい担任教師の男がそんなふうに紹介した。 「じゃあ鐘崎君、簡単な自己紹介を――」  そううながされ、俺は視線を上げて、ぐるりと教室内を見渡した。と同時に、ヒソヒソ声の噂話がピタリと止んで、代わりに如何にもシラけたような空気が流れて伝うのを感じた。
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