希望の星

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我々が移住可能な惑星を探し始めてから季節はもう何度廻ったことだろう。 自然を犠牲にして急成長を遂げた科学は、それでも自然を全く不要とできるほどにはならなかった。気づいたときには、修復不可能なところまで自然を摩耗させてしまっていた。だから、我々は自然が芽吹く場所を、新たに自分たちの星の外に見出だすことにした。安易な思考だと揶揄されようが、我々の希望はもはやそこにしかなかったのだ。 惑星T1033はようやく見つけた、まさに希望の星だった。なにせそこには、我々が生きていくために欠かすことのできない空気と水があったのだ。その空気と水が我々に害のないこと、むしろ我々の星のものとほぼ同じ組成をしていることも、探査機を飛ばして念入りに調査済みだ。 一つ問題があるとすれば、そこには既に先住民が居るようだということである。これがまた、我々人類と同じような外見をしており、それなりの文明を築き上げているのだから驚きだ。その手の話が大好物の学者たちが宇宙人の存在にどれほど盛り上がったことか。とにもかくにも、彼らと友好的な関係を結べるかが我々の移住計画を左右する重要なファクターとなることに違いはなかった。 科学力ではこちらが勝るものの、物資の供給がほぼできず、地の利もない我々にとって、先住民との戦争だけは是が非でも避ける必要がある。ならば、先住民との対話の方法は?彼らは何を好んで何を忌み嫌う?まだまだ足りない情報ばかりだった。 そこで、ついに有人での実地調査が行われることとなったのである。 此度の宇宙渡航はその記念すべき第一回目なのだ。 …………………なのだが………。 「何つぅ色してんだ、この惑星………」 最初に声を上げたのは、技術士のジャッロだった。 彼がこのように言うのも無理はない。 惑星T1033は、我々が今までに見たことのないような、禍々しくも美しい色をしていたのである。
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