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「お疲れさまー、明日もよろしくね」
「はーい!じゃあ、お先に失礼しますね」
店長さんに挨拶をして、店を出る。
「え?君……?」
「バイト、終わったんですよね?えっと、菊地さん……?」
まるで待ち伏せをしていたかのようにドアの前に立っていたのは、あの妙なお客さんだった。
(……見てたのバレたのか!?)
特に犯罪になるようなことはしていないはずだと、菊地玲は振り返ってみる。
名前を知っているのは、名札でも見たのだろう。
「これから時間空いてますっ?」
「……空いてるけど」
まっすぐ家に帰るつもりだったけど、夕食までは時間があるし、少しぐらいなら空いている。
でも、ホントになんの用事だろう?
悪いことをしたわけでもないのに、何となく身構えてしまう。
妙なお客さんは、かばんの中をごそごそと漁っている。
「勉強、教えてくれませんか?」
「へ?」
かばんから取り出したのは、問題集らしい。
店で見ていても、少し変わった人だとは思っていたけれど。(もちろんそこも魅力)
目を合わせて顔をみる。
緊張ぎみで、真剣そのもの。
普通は他人に等しい奴に勉強なんて教えてもらわない、っていうのか玲の常識だったのだが。
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