69人が本棚に入れています
本棚に追加
「私は、高橋真里、また競争しようね」
それで、この会話は終わりだった。
菊名で、乗って来た彼女の友達。多分、会話から、加奈さんという名前だと思うけど。僕の前で二人で喋っていた。
そして、中目黒で僕が席を立つと
「今日は、ありがとう、明日もまたね」
と彼女が言った。
「うん」
と答えて、電車を降りる。後ろで加奈さんが「どうやって知り合ったの?」とか言っているのが聞こえた。
次の日も、横浜駅のホームで彼女を探したけど、見当たらなかった。
仕方なく肩を落として電車に乗り込む。今日も席を確保する事が出来た。
発車のベルの直前に、誰かが僕の前に立った。
「相鉄線が遅れて、乗り遅れる所だったの。おはよう。今日も会ったね」
真里だった。僕が顔を上げると、大きな目で僕を見てる。
走ってきたのか、肩で息をしている。
「おはよう、えっと高橋さんだっけ」
真里が、また満面の笑みを浮かべる。
「あっ、名前覚えていてくれたんだ。ありがとう。そう言えば、あなたの名前は?」
僕は、少し躊躇しながら答えた。
「えっと、二宮貴教」
真里が、ニッコリ笑った
「よし、覚えた。私の下の名前覚えている」
僕は、もちろんと思った。
「真里さんだよね」
「よし、記憶力は充分だね」真里が変な事を言う。
最初のコメントを投稿しよう!