第9章 枯渇

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(自分なんてないんだ、他者がいてはじめて自分を認識できるんだ)準はたしかそう言ったっけ。でも疑う自分がいることは間違いないとデカルトは言っている。自分の脳みそなんてわからない、大切なことはわからない。わからないことを知っているとソクラテスは言い放った。ずいぶんと口達者なヤツだ。僕はアルコールで深い思考にはまると急にまた誰かが恋しくなって夜の街を彷徨うのだ。やさぐれていく僕の道徳心。  ピンサロといって、女の子が射精だけさせる店に行った。指名なんてない、と言ったらセーラー服のデブ女が咳をゴホゴホさせながら座席に座る僕にのしかかり「時間かかるね」なんて言われたからぶっ殺そうかと思った。性器が反応さえしないではないか。  赤線街の中国女のたむろしている輪に突撃して「本番2万!アーユーOK?」と一番可愛いと思われる子に声をかけた。いざ本番になったら「オニサン、飲みすぎ?」そう。もう性器が役立たずになってしまうほど時間と歳を重ねてしまった。ますます焦りと虚しさが僕を狂わせた。  病気をもらった。性器が痛痒いのだ。あのピンサロのデブ女のせいだ。昔から素人でないとすぐ病気になる。肌が弱いのだ。泌尿器科に行って診察を受ける。  「クスリ塗って駄目ならまた来てください」「あ、あの先生、実はこっちが役に立たなくて、歳でしょうか? 」「いいけど、シアリスね、保険外だよ」「おいくらで」「1つ2千円」 (ギャー高!)「じゃあ5錠で」「遊び過ぎないように、お大事に」     
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