第3章 ジェイムズ登場

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第3章 ジェイムズ登場

 19××年4月。準は好きな英語の道に進みたいと、私立の英米文学科に、僕はあまり考えず、社会の機能を調べてみたい、そんな軽い気持ちで私立の社会学科になんとか無事に合格した。  入学と同時にバブル経済が崩壊した。時は第2次ベビーブーム。とっても子供が多かった僕らの世代は熾烈な競争に勝ち抜いても、一気に絶望へと追い込まれたような感じになってしまった。同時に虚脱感が溢れ始めた。世の中が、日常世界が、急に暗い表情になっていって退いていったように思えた。僕もご多分に漏れず、壁を登った後の空虚な景色に失望した。リクガメは遠く先に進んでいた。  バンドブームも次第に陰りを見せて、数々の大御所バンドが解散やソロ活動へと動いていった。その理由はさまざまだろうが、バンドというものは長くは続かないことは明白に見えた。  橘田準は、本格的に作詞作曲を始めた。もともと中学時代から作っていたが、日本語のラブソングの王道でどれもエゴが強く、「After Q」という名で高校の文化祭にも出たが客の反応はイマイチだった。今回は満を持しての全曲英語による創作が始まった。     
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