第1章 ノームダンジョンの異変

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イグサム王国は、大きな湖があり、多種多様な草花と雄大な木々に恵まれ、レンガで造られた家々が規則正しく建ち並ぶ美しい王国だ。隣国に比べると国土は小さいが、数多くのダンジョンが建ち並んでいる。 ダンジョンは、そびえ建つ塔のようなもので、小さいものだと9階層、大きなものでは99階層のものがあり、内部には沢山の魔物が住んでいる。 魔物は徒党を組む習性があるため、同種の魔物が集まり、巣食う魔物の種類によってダンジョンは3つのタイプのいずれかとなっている。 1つ目のタイプは羽を持って空を自由に飛び廻る魔物が集まる「空タイプ」、2つ目は泳ぎが得意で水の中で暮らす魔物が集まる「海タイプ」、最後は陸地で暮らす魔物が集まる「陸タイプ」だ。 1つの王国に対して、1つのタイプのダンジョンが2~3ヶ所存在していることが普通だが、イグサム王国には、何故か全てのタイプのダンジョンがあり、数は20を超えていた。 街を拠点に多種多様なタイプのダンジョンを連日攻略できることから、各王国から冒険者達がイグサム王国に集まり、ダンジョンで回収した様々なものを街で売買したり、酒場で酒を酌み交わしたりと街は連日賑わいをみせ、国民の生活はどの隣国よりも潤っていた。 イグサム王国の街から最も近くにあるのがノームダンジョンだ。階層は49階層で、いわゆる中規模ダンジョンと言われるもの。陸タイプで、外壁は地上から最上階まで草花に覆われている。 最上階は屋外となっており、バオバブの木が青々とした葉を携え、所狭しと立ち並ぶ。バオバブの木々に囲まれた中心には小さな古びた城(と言うよりも少し大きな2F建ての家)がポツリと建っており、2Fの開け放たれた窓からは今朝も少し苦味のある入れたてのチャーチティーの香りが漂っていた。
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