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 深夜二時頃に小さな男の子の兄弟が藤沢駅北口にある駅前広場のベンチに座り,何かを一生懸命並べていた。男の子たちの前を何人もの大人が通り過ぎていったが,誰一人として子供たちに興味を示さず,そこに子供がいることさえ気付いていない様子だった。  男の子たちは暗がりのベンチの上で三つの小さな肉塊を大きさ順に並べて,まるで人形でも扱うかのように立たせたり転がしたりした。そして一番小さな肉塊を端に寄せて,残りの二つをくっつけると薄汚れた布でグルグル巻きにして両手で成形するように人の形にした。  布で巻かれた肉塊はまるで胎児のような形になり,不自然に大きな頭の下の方についた顎らしき突起が,小さく呼吸をしているかのような微かな動きを見せた。  男の子たちは黙って肉塊の様子を見ていたが,やがて肉塊の背中部分が上下させながら不気味に呼吸をし始めると二人は顔を見合わせ醜く歪んだ笑顔を見せた。  兄のほうが布で覆われた肉塊を抱きかかえると,古い寂れた飲食店街へと移動し,古いスナックの横に置かれた大型のゴミ箱に肉塊を投げ入れた。弟は手に一番小さな肉塊を持ったまま,兄の様子を黙って見ていた。二人はゴミ箱の蓋をすると,そのまま夜の闇に溶け込むように姿を消した。  ゴミ箱の中では薄汚れた布に包まれた肉塊が激しく呼吸をし始め,ゆっくりと(いびつ)(ゆが)んではいるが,徐々に人の形へとなっていった。  そして一時間も経った頃にゴミ箱の蓋が微かに開くと,そこから布を(まと)った小さな女の子が滑り落ちるようにして出てきた。  そのまま醜く歪んだ身体を引きずるようにして物陰に隠れると,指をしゃぶりにながら身体の成長が安定するのを静かに待っているようだった。朝陽が射し始める頃には,柴犬くらいの大きさになっていた。眼は真っ黒で,赤紫色の肌が徐々に人らしく変化していき,手脚が異様に細かったが,なんとか人らしい形へとなっていった。 「ァ……ア…………ァ……ア……」
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