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 鈴本の遺体は警察病院で徹底的に調べられていた。遺族には違法薬物と病院で出される処方薬の大量摂取が死因だが,薬物の特定と死因の関係,そして念のために病気など健康上の問題が死因になっていないか検査が必要だが,さまざまな薬物を同時に摂取しているため検査結果が出るまで相当の時間が必要だと伝えた。  遺族は,息子が自ら違法薬物に溺れていたのか,誰かに無理矢理摂取されていたのか徹底的に調べて欲しいので,どれだけ時間が掛かってもよいのですべて任せる,と警察も驚くほど協力的だった。  その間,医師達による徹底的な検査が行われた結果,精巣が輸精菅と精嚢とくっついたまま綺麗に摘出されているのがわかった。目立った外傷もなく,どこから精巣を体外に摘出したのかがわからず,史江のときと同じような疑問が警察と医師達を混乱させた。  唯一,今回の違いは鈴本は死亡し,史江は意識不明だが生存していることだった。二人の警察官は,飾り気のない人のいなくなった診察室で担当した医師と向かい合っていた。 「先生……人間の身体から生殖器を抜き取るような治療方法というのは,一般的にあるのでしょうか?」  飯塚峻一(いいづかしゅんいち)が,鈴本の資料を手にしhて医師に質問してみた。 「治療としてはいくらでもあるけど……。生殖器のがん治療なんかは臓器摘出も一般的だね……」 「なるほど……がんですか……」 「ああ……性別や年齢に関係なく,生殖器を摘出する人のほとんどが腫瘍のある患者だと思うよ」 「じゃあ,生殖器を摘出すること自体は難しいことではないんですね?」
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