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「そうだね……とくに男性のほうがシンプルだし出っ張ってるし,比較的簡単かな……。まぁ,手術に簡単なことはないんだけど,どっちかといえば女性より男性のほうが手術する側も気も楽だしね」 「鈴本のケースでも……先生なら簡単に摘出できますか?」  医師は峻一の後ろに黙って立っている石渡祥子(いしわたりしょうこ)にチラリを視線を送ってから,少し考える素振りをして首を横に振った。 「このケースは……正直,どうやって摘出したのか,まったくわからない」 「と……言いますと?」 「摘出するだけなら簡単だよ……お腹開けちゃえばいいんだもん。でもね,この遺体はね……精巣と輸精菅と精嚢を同時に摘出して,しかも摘出した(そう)がどこにもないんだよ……。取り出してから完治するまで時間が掛かるし,傷跡が完璧に消えることはまずない。正直,なにがなんだかわからない」 「なるほど……」 「内視鏡を使ったとしても,小さな傷は残るんだよ。一つも傷も残さず,これほど完璧に摘出することはできないね。不可能だよ」 「わかりました……先生,ありがとうございます」  峻一は安心したと同時に,胸の奥に蠢く不安のようなものが増していた。もし今回のケースが医学的に解明できるようであれば,峻一と祥子が追っている事件とは別ということになってしまうので,医師の説明は非常に満足できるものだった。しかし,それはこれから追う犯人が益々理解を超えたものであることを明確にしているようにも思えていた。
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