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「桃太郎や、これを持ってお行き」とお婆さんが、竹の皮で巻いた包みを差し出した。
「これは、きびだんご?」
「いいえ、いちご大福よ。巷で評判なの」
「いちごだいふく?」桃太郎は初めて聞いた。
「とっても美味しいの。苺の酸味とほのかな餡の甘さがマッチして、それを包む大福のもっちりとした食感は至福の時を連想して、それはもう…」
「もういいよ!いつまで大福の説明をしてんだよ!」
「とにかく俺は、ゆうしゃを目指す」そう言って桃太郎は、勇者がなにか分からないまま、鬼退治へと向かったのであった。
村を出た桃太郎は、峠を越えるべく山の中へと入っていった。
「少し休憩するか」と切り株に座り、竹筒の水を飲んでいると一匹の猿が現れた。
「おい、お前何処に行くんだ?」
すると桃太郎は、竹の皮から大福を取り出して食べ始めた。うんうんと、相槌を打っている。
「おいお前!何処に行くんだよ!」猿がもう一度聞いた。
また桃太郎は、竹筒の水をぐいっと飲んだ。
あーうめー!とまた相槌を打った。
「こら!聞こえないのかよ!お前だよ。お、ま、え!」猿は頭にきて、桃太郎の目の前で指を差した。
「え?俺に聞いてるのか?」と桃太郎が答えた。
「お前しかいないだろ?他に誰がいるんだよ、全く!」と猿は顔を真っ赤にした。
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