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3
鬼ヶ島は離島であった。
活火山がそびえるその島は、常に黒煙が立ち込めていた。
「こりゃあ舟がいるなあ」と桃太郎は、遠くに見える島を眺めた。
そして漁師に、格安で中古の漁船を譲って貰った。
勿論、漁船といっても時代が時代である。
手漕ぎの小さな舟であった。
そして小舟は、鬼ヶ島に辿り着いた。
すると、ドンドコッドンドコと太鼓の音が聞こえる。
何やら胸騒ぎがする。
皆んなは足音を忍ばせて、音のする方へと向かった。
小高い丘から見下ろすと、太鼓の音はその下から聞こえている。
そこに鬼達はいた。
20匹くらいであろうか。
鬼は太鼓の音に合わせて踊ったり、酒を飲んで騒いだり、何と子供の鬼までいた。
「何じゃありゃあ?」猿が言うと
「どうも宴会のようですな」と犬が答える。
「僕が少し、様子を見てきます」とキジが飛び立った。
そしてキジは、鬼達の傍にそっと忍び寄り、その声に耳を傾けた。
「最近はどうかね?」
「余り芳しくないなあ。景気も悪いし」
「人間が潤わんと、わしらまで回って来ん」
「本当に世知がない世の中だ」
と、まるでサラリーマンの会話だ。
「ほら、玩具の取り合いはやめなさい!あなたはお兄ちゃんでしょ!」と母親鬼が、子供を叱っている。
まるで人間と同じではないか!
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