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第一章 適正通知
学校から適正通知が送られてきていたのをトムはその日の午後に知った。
西暦2197年では勉強をする場所は学校ではなく、自宅で教師AIを使って全世界の子供達が同質の勉強していた。
その教師AIには工夫が凝らされており、個人に合わせてゲーム感覚で楽しみながら勉強することができた。なので、子供達が分からなくて知恵熱を出すようなこともなく、難しい問題も労せず解くことができた。
そんな環境の中で、学校から送られてくるのは成績表ではなく、どの方面に適性があるのか、といった適正通知だった。
理解度も人それぞれで、得意な方面は大人顔負けでも、不得意の方は学校を卒業する段階になっても幼児と変わらない人もいた。それでも、苦手な方面はAIがサポートするので何も問題なく社会生活を送ることができた。
トム・ワタナベが受け取った適正通知は、そんな中で異色を放っていた。
その通知を開いたのは、近所の友達と公園に居た時だった。
公園では様々な形を作る噴水があり、人々の憩いの場だった。
「どういうことこれ」
明らかに東洋人の血を引いていることがわかる風貌のトムが見た適正通知の第一印象は困惑だった。
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