第一章 適正通知

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「でもさ、よく見てよ。その宇宙飛行士候補生って下に長距離(ちょうきょり)って書いてあるだろ?」  と、トムは神妙(しんみょう)(かお)で言うと2人がもう一度(いちど)エアディスプレイをのぞき込む。 「あ、ほんとだ」とがっかりした顔をした。  その顔を見て引っ張られていた左腕を(もど)した。  この宇宙飛行士の中でも長距離宇宙飛行士は、その人生(じんせい)を宇宙飛行に捧≪ささ≫げて、遠距離にある(ほし)にまで行くことを意味(いみ)していた。その(ため)、しばしば人権団体等(じんけんだんたいとう)(こえ)()げて反対運動(はんたいうんどう)をしていたりする。 もちろん、近距離(きんきょり)の宇宙飛行士も居る。(かれ)らが()くのはもっぱら太陽系内(たいようけいない)惑星(わくせい)までだった。 「え~、じゃあ。もうトムと()えなくなるかもしれないってこと?」  アリスが(かな)しそうな顔で言った。 「いや、すぐに行く(わけ)じゃないだろう。長距離の宇宙船(うちゅうせん)(かえ)ってくるの3年半後(ねんはんご)じゃなかったっけ?」  人類(じんるい)は22世紀にはワープ航行(こうこう)実現(じつげん)できていた。が、それでも1,2年程度(ねんていど)で帰ってこれる範囲(はんい)には生物(せいぶつ)が住める星や、ましては知的生命体(ちてきせいめいたい)はまだ発見(はっけん)されていなかった。  だが、銀河系(ぎんがけい)から一番近(いちばんちか)いと言われている、おおいぬ座矮小銀河(ざわいしょうぎんが)の中の恒星(こうせい)の一つに地球型(ちきゅうがた)の惑星で、(みず)もある星を天体望遠鏡(てんたいぼうえんきょう)が発見し、47年前(ねんまえ)第一弾(だいいちだん)調査飛行(ちょうさひこう)へ12名の宇宙飛行士が宇宙船マジェスティックリムーブ(ごう)()かった。  おおいぬ座矮小銀河までは2万5000光年離(こうねんはな)れている。ワープ航行をしても往復(おうふく)で50年かかるとのことだった。
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