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「でもさ、よく見てよ。その宇宙飛行士候補生って下に長距離って書いてあるだろ?」
と、トムは神妙な顔で言うと2人がもう一度エアディスプレイをのぞき込む。
「あ、ほんとだ」とがっかりした顔をした。
その顔を見て引っ張られていた左腕を戻した。
この宇宙飛行士の中でも長距離宇宙飛行士は、その人生を宇宙飛行に捧≪ささ≫げて、遠距離にある星にまで行くことを意味していた。その為、しばしば人権団体等が声を上げて反対運動をしていたりする。
もちろん、近距離の宇宙飛行士も居る。彼らが行くのはもっぱら太陽系内の惑星までだった。
「え~、じゃあ。もうトムと会えなくなるかもしれないってこと?」
アリスが悲しそうな顔で言った。
「いや、すぐに行く訳じゃないだろう。長距離の宇宙船が帰ってくるの3年半後じゃなかったっけ?」
人類は22世紀にはワープ航行を実現できていた。が、それでも1,2年程度で帰ってこれる範囲には生物が住める星や、ましては知的生命体はまだ発見されていなかった。
だが、銀河系から一番近いと言われている、おおいぬ座矮小銀河の中の恒星の一つに地球型の惑星で、水もある星を天体望遠鏡が発見し、47年前に第一弾の調査飛行へ12名の宇宙飛行士が宇宙船マジェスティックリムーブ号で向かった。
おおいぬ座矮小銀河までは2万5000光年離れている。ワープ航行をしても往復で50年かかるとのことだった。
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