第一章 適正通知

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「3年半後つったら、20(さい)だぜ。これから本物(ほんもの)人生(じんせい)を楽しんで行こうって(とき)にこれから50年宇宙飛行士として従事(じゅうじ)してくださいってないよ。俺の青春(せいしゅん)どうなんのよ」  そんなことをトムはぼやいた。 「あら、相対性理論(そうたいせいりろん)では航行中(こうこうちゅう)(とし)を取らないんじゃなかったっけ?」 「ああ、(たし)かそんなことを勉強したっけ、むしろ(ひかり)速度超(そくどこ)えると若返(わかがえ)るんじゃなかったかな」  アリスの(はなし)にマイケルが相槌(あいずち)()つ。 「そりゃそうでも、帰ってきたらみんな50歳年取(さいとしと)ってて、こっちは若いままってことじゃん。下手(へた)したら2()とも()んでるかもしれないじゃん」  トムは(つづ)けて不平(ふへい)を言う。 「2人とも、俺と2()と会えなくなってもいいってわけ?」  そう()()める。 「そんなこと言ってないわよ。よく(かんが)えてみてよ、他の人でなりたくてもなれない人も居るのよ?」 「それにまだ(あと)3年半も先の話だろ、その(あいだ)一緒(いっしょ)に居れる訳じゃん。どうしても(いや)なら適正修正依頼書(てきせいしゅうせいいらいしょ)書けけばなんとかなるかもしれないじゃないか」  2人は(なぐさ)めてくれるが、トムは納得(なっとく)がいなかった。  この適正通知は1(ばん)から順番(じゅんばん)に適性が書かれていて、ほぼ1番に書かれている職業に就くのが一般的(いっぱんてき)だ。そしてトムの適正通知の1番には宇宙飛行士候補生と書かれているのだ。これを(くつがえ)して、2番以降(ばんいこう)の職業に就こうとすると、理由(りゆう)を書いた適正修正依頼書を提出(ていしゅつ)しなくてはならない。しかも、それはほとんど通≪とお≫らないと聞いている。もう決まったようなものだろう。
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