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受賞ニュースが終わった。店の店主が警官をなかなか開放せずに話し込んでいる間に、賢治はそっと店の外に出た。華京院がすぐ後に続く。
「あんたはどうする、これから」
「陽菜ちゃんにおめでとうって言いに行きます。無性に会いたくなりました。あの子は俺の相棒で、恩人ですから」
華京院は静かに頷く。
「その後は?」
「そうですね……」
道の反対側の田んぼのあぜ道に、白とグレーのアオサギがゆっくりと舞い降りるのが見えた。賢治は華京院を振り返る。
「もう一度、この伊佐で暮らそうと思います。チャンスを貰いましたから」
「そうか。良い決断だと思うよ」
ニンマリと笑う華京院に賢治も微笑みを返し、そしてあぜ道に佇むアオサギに再び視線を戻す。
アオサギは長く美しい首をほんの少しだけ動かし、賢治を見てささやいた。
お帰り。
-了-
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