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公園内に居る観光客も、売店の人も、絶対に見えているはずなのに、その物の怪たちに特に何の反応もしない。さり気なく河童に話しかけている店員さえいる。その日常感が、賢治にはとてつもなく不気味に思えた。
付かず離れず傍を歩く少女も同じに違いなかった。完全に血色を失っている。
「さっきまではさ、俺と君が突然そういうのが見える人になっちまったのかと思ったんだけど、やっぱなんか違うよな。ここ、絶対におかしいよな。どう思う?」
「私もそう思います。……ここにいない方がいいような気がします」
少女の声が恐怖のためか微かに震える。
「俺、スクーターで来たんだけど、君は? 制服っぽいけど学校の帰り? 友達もいっしょ?」
「友達なんていません」
いきなり突っぱねたような声で少女は否定した。そう言えばさっき、泣いているように見えたが、何か事情があったのかもしれない。
「あ、……そっか、ごめん。よかったら、送るけど」
少女がお願いしますと頭を下げて来たので、賢治はなるべく物の怪たちの方を見ないようにして駐車場のスクーターまで案内した。
メットインから取り出した予備のヘルメットを少女にかぶせ、後ろにしっかり座らせてから、慎重に走り出す。
ホラー映画のように物の怪たちに追われるのではないかとひやひやしたが、無事県道に抜け出すことができた。
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