HOME ~この空の下で~

14/97

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
「あの、俺はアイスコーヒーでいいです。それよりも、マスターに訊きたいことが……」 「お客さん、遠くから来られたんですか?」  マスターは手早くアイスコーヒーの準備をしながら、視線をふっと賢治に向けた。瞳が光の加減で金色に見える。カラコンなのだろうか。初めて会ったはずなのに、どこか懐かしい、奇妙な感覚だった。 「俺は……ひとり旅をしてる途中なんだけど、曽木の滝で奇妙な事になって、バッタリ会ったこの子と慌てて逃げて来たんです。あの……ここって一体……どんな……」 「ここ? ご存知ないですか?」 「いや、俺、8年前まで住んでたからよく知ってるけど、ここ、いつからこんな風になったんですか? 前はこんな、河童なんて―――」 「しっ」  急にマスターが唇の前に人差し指を立てた。 「え」 「ガラッパは河童って言われると機嫌を損ねるから」 「あ、ガラッパ。そうだ、川内川(せんだいがわ)の河童は、ガラッパって呼ばれてるんだった」  ドリンクを半分飲んで少し落ち着いたのか、陽菜が元気な声を上げた。賢治もその伝説の妖怪の名に聞き覚えはあったが、問題はそこじゃない。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加