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「呼び名は何だっていいんです。なんでそのガラッパが普通にその辺に居て、ここの人たちは驚きもしないで普通に生活してるんです。ガラッパだけじゃない、しっぽが2つに分かれてる2足歩行の白い狐もいました。あと、石像みたいな顔色の大男とか」
「私も見ました。夕方までは何も不思議な事は無かったんです」
陽菜も拳を握りしめて、加勢してきた。
「私、クラスのみんなと学校行事のショートムービー撮りに川内川沿いをずっと歩いてたんですけど」
「え、友達と一緒だったんだ」
思わず賢治が言葉を挟んだが、陽菜は「友達はいません」、と再び吐き捨てるように言った後、続けた。
「導水路の中で賢治さんといっしょに、変な扉のようなものにぶつかった……っていうか、吸い込まれてから、何だか世界が変わってしまったようで」
「そうなんです、それまでは河童……いや、ガラッパも狐もいなかったのに」
「ああ、そうか」
急にマスターが笑顔になった。
「あちら側からのお客さんか。久しぶりだ」
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