HOME ~この空の下で~

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「そっか。なんだ、もう華京院(かきょういん)さんに出会ってたんなら話が早い」 「ちっとも早くない。全く分からない。ウライサってなに? 一体あの時何が開いたんですか!」  訳の分からない状況が気持ちを苛立たせ、思わず賢治は前のめりに訊いたが、華京院はそれを諫めるようにトンとカウンターを叩いた。 「あんたは気が小さい癖に、頭に血がのぼるのが早いね。その癖は、直した方がいい。今にとんでもないことになる」  その一言は賢治に冷水を浴びせた。心臓が一気に冷えて頭の芯がクリアになる。もうすでに、いろいろ身に覚えがあった。  賢治はアイスコーヒーを半分飲んだあと、素直に華京院とマスターに頭を下げた。 「ごめんなさい。……教えてください、ここが元居た世界じゃないなら、一体どこなのか、そしてどうやったら戻れるか知りたいんです。せめて陽菜ちゃんだけでも帰してあげたくて」 「あんたは?」 穏やかに華京院が訊く。 「俺はもういいんです。どうだって」 「賢治さんもいっしょに帰るんです! 何言い出すんですか!」  不意に陽菜が賢治の腕をギュっと握って来た。その真剣な真っ直ぐな目に、いろんな想いが込み上げて来て、思わず泣きそうになる。  自分では結構感動的なシーンだと思っていたのに、マスターと華京院から零れて来たのは楽し気な笑いだった。
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