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「あんたら、なんだかえらくここが危険地帯みたいに思ってるみたいだけど。そんなに違っちゃいないよ。人間じゃないものがウジャウジャいるが、それだけさ」
「そうですよ。陽菜ちゃんの家も学校もちゃんとあるし、家族も友達もちゃんと居て、今までと何の変りなく陽菜ちゃんに接してくれるはずです」
華京院とマスターが微笑む。
「本当? そうなんですか? お母さんに電話しようと思ってもスマホがずっと圏外だったし、もう本当に、お母さんも知り合いも居ない違う世界に来ちゃったのかと思って……」
やはり不安で堪らなかったのだろう。陽菜はホッとしたように声を震わせた。けれど2、3度瞬きした後、その表情はまたすぐに硬くなる。
「……でも、ここ、ウライサなんですよね。今までの世界と同じじゃないんですよね? お母さんも学校のクラスメイトもみんな居るって、どういう事なんでしょう」
陽菜は再び険しい顔でマスターと華京院を交互に見た。賢治もそこが一番気になる。
「なんて言ったらいいかな。同じだけど同じじゃない。携帯の電波が届かないのがいい例です。家族も学校の友達もきっと陽菜ちゃんを知ってるし、何も変わりないけど、ここは向こうの世界では見えないモノノケたちが人間と共存していて、みんなそれを受け入れている。同じだけど、影のような別の世界なんです。もちろん僕からしたら、モノノケのいない世界の方が不思議だけど、両方のイサを知ってる華京院さんがいろいろ教えてくれて、少し分かってきたところ」
マスターの話を聞いても、やはりよく分からなかった。漫画に出てくるパラレルワールドと言うのとも、少し違うようだ。
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