HOME ~この空の下で~

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 ここまで情報を聞いても、やはり狐につままれたような感じだった。  ただ、とりあえず物の怪がウジャウジャいる以外は、元の世界と何ら変わりはないし、陽菜は家に帰れば両親がいるし、学校に行けば同じ友達や先生がいるらしい。 「よかったな、陽菜ちゃん。ちゃんと家にも帰れるし、家族も学校の友達も、今まで通りだってさ。とりあえず今夜は家に帰ると良い。俺、家まで送ってやるよ。いつか扉が開いたら、その時は元の世界に戻ればいいんだし」  この状況が腑に落ちてはいなかったが、自分がしっかりしないと陽菜も不安がると思い、賢治は笑顔で言った。どっちにしろ、賢治にとってはこの世界が裏だろうと表だろうと、関係なかった。 「ありがとうございます。でもあの……この世界の母は、私の世界の母じゃないんですよね。あの、……賢治さんにも帰る場所があると思うんだけど、もし構わないなら、今夜うちに来てもらえないでしょうか」  よほど心細いのか、ギュッと手を握り締めて陽菜は言った。
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