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「ああ……いいよ、ご両親に会ってあげる。陽菜ちゃんが安心するまでそばに居てあげるよ」
「泊まっちゃいなよ兄さん。ついでに陽菜ちゃんの学校にも行って、いっしょに授業受けてきたらいい」
「は? 何言い出すんですか華京院さん。俺28ですよ」
「あんた今は伊佐の人間じゃないんだろ? だったら物の怪と一緒だから」
「どういう事です」
「ウライサは、伊佐の人間は扉を抜けて来ても人間として感知するが、よそ者は物の怪にしか見えないんだよ兄さん。あんたちょっとイケメンの天狗ってとこかな」
「天……っ」
思わず賢治は鼻を押さえる。
「そんな妙な姿になっちゃってるんですか、俺!」
「でも私にはちゃんと人間に見えます」
「お嬢ちゃんにはね。とにかく、ウライサでは物の怪たちは市民権を得てるし、授業を聴講したいと思えば顔パスで混じれる。そのかわり、注意事項がひとつ」
「まだなんかあるんですか」
「物の怪たちは、あっちの世界、つまりオモテ伊佐からの闖入者には辛辣だから。オモテ伊佐の人間だと気づかれたら、つるし上げられる」
「え……」
「下手したら気の荒いガラッパに川に沈められるかもしれないからくれぐれも気を付ける事」
「めちゃくちゃ危険地帯じゃないですか! 学校どころか外も歩けないですよ。それ最初に言ってください!」
「大丈夫、物の怪たちを変に怖がったり、あっちの世界の話をしなきゃね。家に籠って震えてたりしたら余計に怪しまれて家に押しかけられるよ。物の怪たちは鼻が利くから。要は、この世界の怪異を自然のものとして受け入れればいい。なに、皆やってる事さ」
華京院は事も無げにニンマリと笑う。マスターも穏やかな表情だ。
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