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自分のコーヒー代を払い、「また来ますので、扉が開きそうだったら教えてください」と華京院にお願いして、賢治は陽菜と一緒に喫茶星月夜を出た。携帯電話は使えないが、通貨は一緒らしかった。
外はもうすっかり暮れていて、新月のせいか夜空には星が光り輝き、まさしく星月夜だった。
「ここはやっぱり星が綺麗だよね。よそで暮らして改めて思った」
「ウライサですけどね」
陽菜が笑った。よかった、元気だ、とほっとする。
ちゃんと自分たちを待っていたシルバーのスクーターに乗り、陽菜に教えてもらった自宅まで走り出す。道には歩行者よりも、明らかに人間でない物の怪の姿の方が多かったが、そっとしておけば危険はないことが分かり、幾分気持ちは楽だった。
国道を北に上がり、羽月駅前辺りを東に折れて少し走った住宅地に、目指す陽菜の自宅はあった。道の反対側は田んぼで、草むらからは虫の音が盛大に聞こえてくる。
時刻は8時を回っていたが、家には灯りはついていなかった。
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