HOME ~この空の下で~

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「うちね、母子家庭なんです。お母さんスナックのママやってて、いつも遅いから、居ないのが普通で……。でも、なんだか不思議ですね。ガラッパや狐がいないと、まるで今までと何も変わらない。朝起きたら全部夢だった、とかかも。……あ、狭くて古い家だけど、どうぞ入ってください」  陽菜は少し早口で喋りながら、家の鍵を開けた。 「俺なんかが留守宅に入ったらまずいよ。陽菜ちゃんのお母さんびっくりする」 「たぶん酔っぱらって帰って来て、すぐ寝ちゃうと思うから平気です。あまり娘の事に構わない人だし、興味もないみたいだし……。あ、もしかしたらガラッパ連れて帰って来ちゃうかも。よくあるんですよ、知らないお客さん連れて帰って来て泊めること。娘よりお店のお客さんが好きみたいだから。だから、私がお客さん連れて来ても平気なんです」  やはり陽菜は早口で喋った。  母親との時間が持てなくて寂しくないわけがないし、母親が嫌いなわけでもないのに、わざと突き放したように振る舞ってしまう陽菜の内面が、賢治には自分の事のように伝わって来る。   「じゃあ、ちょっとだけお邪魔するね。お母さんが帰ってくるまで」 「はい、どうぞ。……っていっても、私も、本当の家じゃないですけど」
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