HOME ~この空の下で~

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 賢治は陽菜に案内されるまま、居間のソファでしばらく寛いだ。  家の中は微妙に伊佐と違うみたいで、陽菜はあれが無い、これの位置が違うと言いながら晩御飯のパスタを作ってくれた。  食べ終わると「これ見て!」と部屋の隅からアルバムをひっぱり出して来てテーブルで開いた。小さなころの陽菜が公園のブランコに乗っている写真だ。その横で白狐が立ちこぎをしていた。その下の小学の入学式の集合写真は、生徒の1割がガラッパや白狐や田の神だった。 「もうカオスだね。やっぱりこの世界は私の居た世界と違うんだ。でも、ちょっと面白いかなって思う自分もいるんです。……明日行く高校も、どうせならみんな物の怪だったらいいのに」  アルバムを見ながら陽菜は笑う。一見楽しげではあったが、その笑い方が賢治には少しばかり気になった。  学校や友達の話をする時の陽菜は、妙に翳りがあった。母親に対するストレートな不満とは少し違う。 「陽菜ちゃんさあ、あの導水路で最初会った時、泣いて無かった?」  賢治がそう言うと、陽菜は驚いた表情をこちらに向けた。 「間違ってたらゴメン。急に思い出して、気になってさ。……あの少し前、学校の友達と一緒に居たんだよね。ショートムービー撮ってたんだっけ」  陽菜はゆっくり立ち上がってアルバムを片付けると、戻って来て賢治の座っているソファの横に座った。  クッションを抱いて深く座り込み、正面の壁を見つめて小さく息を吐いた。
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